エターナル・フロンティア~後編~
「行くわ」
「頑張れ」
「う、うん」
「不安?」
「だって、優秀な人達がいっぱいいるもの。緊張していない方がおかしいわ。私、心臓に毛が生えていないもの。失敗して笑われるとか、悪い方向に考えちゃって……ど、どうしよう」
「確かに、心臓に毛が生えているってイメージはないな。って、変な意味で言ったわけじゃない」
ソラの言い方が引っ掛かったのか、イリアはちょっと頬を膨らます。幼馴染同士の可愛らしいやり取りにユアンは咳払いすると、時間がないのでいちゃつくのは後回しにして欲しいと言う。
ユアンの「いちゃつく」という単語に過敏に反応したのはイリアで、徐々に頬が赤く変化していく。これではアシスタントとして手伝うことはできないと、イリアは頬を叩き精神を落ち着かせようとするが、叩けば叩くほど意識してしまい、頬の赤みを引くことはなかった。
イリアと違い赤面することはなかったが、ソラが纏う雰囲気が先程と違いいつもの冷静さは感じられない。彼等の姿にユアンはクスっと笑うと、二人の初々しい変化をこれ以上からかっては可哀想だと思ったのだろう、ユアンはイリアに早く行こうと優しい声音で促す。
「じゃあ、ソラ」
「ああ」
「取って食ったりはしない
「当たり前です」
「優秀な彼女をそのようなことはしない。馬鹿に何を言っても、理解しようとはしないからな」
「相変わらずですね」
「嘘は言っていない」
辛辣な言葉を言いつつ、視線を向けているのは周囲にいる者達。ユアンは彼等を「馬鹿」と指摘しているが、決して頭が悪いわけではない。それどころか優秀な人物が集まっており、中には名前を知られている者もいる。それでもユアンは「馬鹿」と言い、優秀ではないと言い放つ。
所構わずそのようなことを言うのだから、必然的に周囲に敵を作ってしまう。それは自分に絶対な自信を持っているからこそ言える言葉で、まさに完璧そのもののユアンだからこそ口にできる言葉であった。だからといって、ソラはユアンを尊敬したいとは思っていない。