エターナル・フロンティア~後編~
ユアンと視線が合った瞬間、一部の者の態度が変化する。その者は敵対している人物なので何か言ってくるのではないかと予想したが、ユアンの堂々とした雰囲気と常に身体を纏う迫力に負けてしまったのか、視線が合った者は弱弱しい一面を見せそそくさと姿を消す。
この者はユアンを嫌っているというより、存在自体を恐れている。出会った人物に、いい意味と悪い意味の両方で影響を与えるユアン。この年齢でこれだけの人物として君臨しているので、熟年と呼ばれる年齢まで成長したら、どのような人物になっているのだろうか。
今以上に影響力が強くなり、敵対する人物もそれに比例するかたちで増えていく可能性が高い。同時に力を持つ者に対しての締め付けも強まり、過度の実験と研究が繰り返される。ソラはユアンの将来に不安感を覚えたのか、心臓が激しく鼓動しだし身震いをしていた。
◇◆◇◆◇◆
何事もなく、無事に進んでいる。
それが、現在の状況だった。
しかし運命は気紛れの代名詞で、いつ違う一面を覗かせるかわからない。時に対象者に牙を剥き、その身をズタズタに引き裂き命を奪うこともある。ソラは気紛れによる突然の変化に恐れ、自分とイリアの身に後に引けなくなってしまう出来事が起こらないことを願う。
ソラは多くの幸福を望んでいるわけではなく、ごく普通の平凡な毎日を送ることができればそれでいいと思っている。そのひとつがトラブルに巻き込まれることなく、イリアと一緒に帰宅できるということ。それだけ幼馴染の身を心配し、ソラは彼女を大切にしている。
ユアンも自ら攻撃を仕掛けることはしていないのだろう、大事に発展している様子はない。流石の彼も場所を理解しているのだろう、常にそのように周囲に目を配ってくれればいいが、相手を挑発し反応を見ることに快感を覚えるのか、ユアンにそれを求めることはできない。
「……流石だ」
「態度だけではない」
「悔しいな」
ふと、三人の中年男の話し声がソラの耳に届く。彼等はユアンと同じ職種の者なのだろう、口ぶりからしてユアンをネタに話していることがわかる。心の何処かで彼を認めているのだろう、研究成果を褒め称える。それでも言葉の端々に見え隠れするのが、嫉妬の感情だった。