エターナル・フロンティア~後編~

 若くして高い地位に就いていることが妬ましいのか、それとも自分が持っていない才能を持ち合わせているからだろうか。ユアンは彼等の感情を刺激するだけの発表を行ったのだろう、三人の顔は憎しみ彩られている。その姿を見た瞬間、ソラは言い知れぬ不安を覚える。

 彼等が、何かを仕出かすのでは。

 このような時こそ、勘が冴え渡る。

 確かにユアンが持つ潜在能力は突出して高いが、それを上手く利用できるか利用できないかは個人の努力次第。ソラはユアンを味方するわけではないが、彼が努力していることは認めている。だが、一言が多いので他者の神経を逆撫でし、それに比例して敵を作ってしまう。

 今回の被害者になるのは、ソラとイリア。特に非力で自分を守る術を持たないイリアが真っ先に狙われたら、簡単にやられてしまう。未然に防ぐことができれば一番いいが、悪口を言っているだけで此方から仕掛けるわけにはいかないし、仕掛けるだけの動機にはならない。

「何故、あれだけのことができる」

「資金が豊富なのだろう」

「どうして、優遇される」

「余程、信頼されているのだろう。それに相応しい功績も多く残している。今回の発表も……憎らしいものだ。何故、皆と一緒にする。どうせ目立つのなら、一人で行えばいい。我々は、引き立て役じゃない。毎回毎回……奴の前に発表する者の身になってほしいものだ」

「だから、あいつの前は嫌なんだ」

「我々が語った内容など、忘れられているだろうな。あの者の話を聞きたい者は多く、期待している」

 彼等が語るのは、積年の恨みそのもの。しかしユアンが見せ付けてくる圧倒的な差に敗北感を覚えるのか、彼がいない場所で恨みを持つ者同士が顔を突きつけ、文句を言い続ける。それが惨めな一面を強調していくことはわかっているが、言葉に出さないとやっていけない。

 だからこのようにユアンを批判し合い、同じ考えを持つ仲間がいることを確認する。見方によって、彼等もユアンの被害者なの一部なのだろう。そう、ソラは彼等の行動に評価を下す。するとソラの考えが彼等に伝わってしまったのか、三人が一斉に此方に視線を向けてきた。

 タイミングがいい彼等の態度にソラは反射的に視線を逸らしてしまうが、別に彼の心を読んだわけではなく、たまたまソラがいる方向に視線を向けただけのことであった。彼等は何事もなかったかのように視線を戻すと、再び溜まりに溜まった感情を言葉に表していく。
< 49 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop