エターナル・フロンティア~後編~
だが、全ての面が科学で証明されるものではない。世の中には「偶然」と「必然」の二種類が存在するといわれているが、ソラとユアンの出会いは偶然か――いや、流れからいうと必然の方が正しい。現にユアンは様々な策略を練り、義父達が生み出したソラを手に入れた。
本当の意味で手に入れたのならソラを有効利用しないといけないが、その前にプロジェクト参加者の口から概要を細かく語らせないといけない。語り部として選んだのがレナであり、第一線から退いたとはいえ何も語らないというのは許されることではない。だから彼女を選んだ。
ユアンはソラに、これからレナもとへ行くということを話す。また共に来て、プロジェクトの立ち上げ理由など語って貰おうと囁く。彼の言葉にソラはユアンに視線を合わせると何かを発しようとするが、上手く声音にならない。しかしソラも概要を知りたいのだろう、頷き返す。
「体調は?」
「あまり――」
「薬を使うか?」
「怪しい薬ですか?」
「いや、出掛ける前にそのような薬は使わない」
「では、別の機会に使用するのですね」
「裏を読むな」
ソラはユアンのように勘がいい人物ではないが、実験や研究の面での彼等の行動を読むのは上手い。生存本能が勘を働かせているのか、裏を読むソラにそのような薬は使用しないと約束し、身体に害が出ない薬を使用するというが、ソラは頭を振り薬の使用を拒絶した。
「いいのか?」
「はい」
「行けるか?」
「リオルも一緒に――」
「勿論だ」
現在の精神状態を考えると、リオルと切り離すことに利点が考えられない。それに我儘で喧嘩っ早い一面を持つリオルだが、ソラと一緒にいれば大人しく愛らしい子犬に変化する。
ユアンの了承を得たソラはベッドから身体を起こすと、手を差し出しリオルを呼ぶ。
大好きな主人の呼び声にリオルは尻尾を引き千切れんばかりに振ると、ベッドの側へ駆け寄り飛び乗ろうとするが跳躍力がいまいち足りなかったのだろう、鋭い爪がシーツに引っ掛かってしまう。見兼ねたソラはリオルの身体を掴み引っ掛かった爪を外すと、自身の太股の上にのせた。