エターナル・フロンティア~後編~
悔しい。
三人の話を総合すると、この単語に行き着く。もしユアンの性格が温厚で、協調性が高い人物だったら状況は違っていたのだろうか。ふと、ソラは“もしも”の世界について考えてみる。その“もしも”の世界が現実であったら、ユアンはトップに立っていたのか怪しい。
出世欲が低下しているとしたら、辛辣な言葉を言い周囲に敵を作るような行動は取らないだろう。同時に性格が大幅に改善されているのなら、タツキやクリスのようになっているかもしれない。また力を持つ者に対し優しく接してくれ、いい相談相手になっているのだろうか。
ユアンが彼等と同等の性格に変化した姿を想像するが、全くといってイメージが湧かない。やはりユアンは現在のユアンしか考えられず、優しい性格はどちらかといえば似合わない。しかし似合わないからといって、ユアンが行なっている言動を受け入れるわけにはいかない。
“もしも”の世界は、あくまでも“もしも”の世界。その中で生きるユアンを求めたところで、その人物に変化するわけがない。それに世界を取り巻く状況はソラ達に冷たく、味方になってくれる人物はごく僅か。その中でのユアンの立ち位置は――正直、わかり難い。
三人の会話は、今も続けられている。交わされている会話は先程と変わらず、ユアンの話だった。彼等が何か仕出かしたらいけないと、ソラは視線を合わせず耳を澄ませ会話だけを聞く。内容が内容なので気分がいいものではないが、トラブルを未然に防ぐにはこれしかない。
「もう少しで終わる」
「絶賛か」
「毎回のことだ」
「だが、気になる」
「当たり前だ」
「媚を売るか?」
「そんなことするか」
いつ終わるともなく続けられる、ユアンに対しての愚痴。しかし彼等の会話は、突如終了する。彼等の前に姿を現したのは、話の話題となっていたユアン。突然の本人登場に三人は顔を気まずそうな表情を作りながら途中で会話を止めてしまい、一斉に視線を逸らした。
だが、それが違和感を生み出す。元々、勘がいいユアン。彼等が何をやっていたのか簡単に見抜くと、彼等の前まで行き不適な笑みを作る。四人の間に漂うのは、微妙な空気。不穏な何かを感じ取ったイリアは、オドオドとした態度を取りながらソラのもとに逃げてきた。