エターナル・フロンティア~後編~
「大丈夫か」
「う、うん」
「良かった」
「でも、雰囲気が……」
「あれは、仕方ない」
「そういうけど……」
「何かできる?」
「……無理」
「だから、この場合は遠くから見守っている方がいい。下手に口を出すと、何を言われるかわからない。それに、言ったように仕方がない。ラドック博士が、あのような人物だから」
ソラはあのように言っているが、一触即発の状況は変わらない。あの三人はユアンの才能は認めていても、自分が得ることができない高い地位と豊富な研究資金を持つユアンに嫉妬心を覚える。だから不平不満を持つユアンの登場に、反射的に威嚇の雰囲気を見せるが言葉は続かない。
何も言おうとしない三人に代わり、ユアンが口を開く。相手を侮辱する言葉を発するのではないかとソラは反射的に身構えるが、ユアンの口調は穏やかで相手の神経を逆撫でするものではない。それどころか堂々としており、口調だけではなく態度でも三人は負けていた。
「……素晴らしかった」
「それは、有難うございます」
「どのようにして、結果を――」
「己の才能……とは、申しません。多くの者が協力してくれるからこそ、いい結果を得ることができます。自分一人では、とても……ですので、協力者に対しては感謝しきれないです」
自分自身の才能も勿論のことだが、部下の努力も労うのがユアンのいいところ。また言葉も謙虚そのもので、ユアンの裏の一面をしらない者が彼の言葉を聞いたら「何と素晴らしい」と、褒め称えるだろう。しかし言葉を向けられている三人は、いい表情をしていない。
「どうしましたか?」
「いや、何も……」
「それは良かったです」
穏やかな口調が続くが、言葉と内に秘めている感情が一致していないことを見抜いているのはソラだけだった。確実に、三人を見下している。また、言いたいことがあるのなら面と向かって言ってこいと言いたいのだろう。徐々にそれが、態度に見え隠れしてきている。