エターナル・フロンティア~後編~

 唯一信頼している主人の太股の上が気に入っているのか、リオルはソラの太股の上で身体を丸くすると、黒い鼻でソラの手の甲を突っ突く。また身体を摺り寄せ、犬というより猫に近い。ソラはリオルの身体を撫でつつ、プロジェクトの参加者のレナが本当に真相を話してくれるのかと迷う。

 柔和なイメージを持つレナだが、以外に口が堅く強情な一面を持っている。その人物が、人間が人間を生み出すという神を恐れる研究を行ったことを語るのだろうか。そう、ユアンに尋ねると彼は不適な笑みを浮かべ、強制的に聞き出すので平気と言葉を返す。

「得意技でしたね」

「最近、言うようになったな」

「このような世界で生きていれば……」

「……そうだな」

 様々な思惑が入り混じる世界で生きていくには、それ相応の強さを身に付けないといけない。特に精神面の強化は必要不可欠で、それを怠れば途中で表舞台から退出しないといけない。いや、途中で退出できればいい方で、最悪押し潰された者は精神を病んでしまうという。

 ソラはギリギリの位置で精神の崩壊を耐えていたが、自分が育ての親を含め多くの人間の手で造り出されたと知った時、彼の精神は強く衝撃を受け蜘蛛の巣のような細かい罅が幾重にも入ってしまう。結果、ユアンの側にいることに異論を唱えることをしなくなってしまった。

「立てるか?」

「はい」

「その前に、着替えないといけないな」

 ユアンが指摘した通り、現在ソラが着ている服では外に出歩けない。彼が着ているのは実験時に着る薄手の服で、尚且つ全身が血で汚れている。これで出歩いたら、行き交う人々が悲鳴を上げてしまう。

 といって、すぐに服を用意できるものではない。それを聞いたユアンは研究所に置いてある自分の服を貸そうと言うが、ソラとユアンでは体格が違うので服を借りても身体に合わない。

 それならレナの家に向かう途中で新しい服を購入すればいいが、血塗れの服装で入店は断られてしまう。服を購入するまで、身体に合わなくてもユアンの服を借りないといけない。ユアンの言葉にソラは素直に頷き返すと、一時的だが体格に合わない服を借りることにした。

 「待っていろ」という言葉を残し、ユアンは服を取りに向かう。その間ソラは逃げる素振りを見せず、リオルの身体を撫でつつ静かにユアンの帰りを待つ。そして戻って来たユアンから服を受け取ると血で汚れた服を脱ぎ着替えていくが、やはり服のサイズは合わなかった。
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