エターナル・フロンティア~後編~

 ユアンの言葉共に、イリアが瞳を潤ませながら自分を凝視してくる。その両方のダブル攻撃にソラは完全に白旗を上げてしまい、都合のいい日ではなく今日連れて行くと約束する。ソラが約束してくれたことにイリアは嬉しそうに微笑むと、一緒に行けるのならどの店でもいいと言う。

「いいの?」

「うん」

「そう言われるのが、一番……」

「それなら、パスタがいいわ」

「パスタ……か」

 といって、自分が今いる周辺にあるパスタ店は知らない。しかしこの世界にはインターネットという便利な代物があるので、それを使用し調べればいい。また口コミサイトも同時に使用すれば、美味しいパスタ店を見付けることが可能だ。ソラは早速調べようと試みるが、寸前で手が止まる。

「……ラドック博士」

「どうした」

「いや、本当に……」

「わかっている」

 ソラの言いたいことがわかったのだろう、ユアンは口許を緩める。そして夕方になる前まで戻って来ればいいと言い残すと、自分は適当な場所へ行き時間を潰してくるという。ユアンの気遣いというか心遣いにソラは何も言うことはできず、彼の後姿を見送るしかできなかった。

 やはり、このような面でユアンは勝つことはできない。人生経験が豊富というのも関係しているが、相手への気遣いが上手い。言い方を悪くすれば、裏表の使い方が上手いというべきか。ソラはこれに関しては完全敗北を認めると、携帯電話を使用しパスタ店を検索する。

「好みのパスタは?」

「トマトソースが好き」

「オレは、ミートがいい」

 二人の好みに合うパスタが提供される店は、どの店なのか――ソラは検索し続け、幾つかの候補を出す。だが、どの店がいいか決められなかったので、イリアに決めて貰う。イリアが複数の店から選び出したのは、パスタだけではなくピザも美味しいと評判の店であった。

 「これでいい?」とソラが尋ねると、イリアは頷きながらこの店がいいと言う。彼女が選び出したのだから、ソラは不満を持つことはない。それに手頃の値段なので懐に優しく店までの距離は遠くなかったので、早速イリアを連れソラは公共の乗り物を使いその店に向かった。
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