エターナル・フロンティア~後編~

 しかしそれを言うには、今がいいタイミング。それに付き合いだし恋人同士になったのだから、願っても構わない。ソラは意を決し、そのことを口にする。彼がイリアに伝えた内容というのは、一緒に暮らさないかというもの。それに対しイリアは、なかなか返答ができなかった。

 彼女にしてみれば、まさかソラがそのようなことを口にするとは思わなかったのだろう、何と答えていいか迷ってしまう。だからといって不快な思いはせず、寧ろ嬉しかった。イリアは俯きオドオドとしながらも、自分の思いを伝える。私も、ソラと一緒に暮らしたいと――

「いいのか」

「うん。でも……」

「ああ、両親か」

「ソラのこと嫌っているから……」

「わかっている」

「御免ね」

「イリアが、謝ることはないよ。こればかりは、仕方ない。わかってもらおうと思わないし、わかってくれとも言わない」

 無理に存在の意味を説いたところで、相手に迷惑なってしまう。まして存在そのものを嫌っている相手にどのように言っても、聞き入れてはくれない。イリアの両親が何と言おうと、イリア自身が好意を抱き自分の彼女になってくれた――ソラは、それで十分であった。

「今、すぐじゃなくていい」

「いいの?」

「こういうことは、きちんと言わないと。隠していても、すぐにわかってしまう。何も言わず、知られたら……もっと……オレは、そうならないで欲しいと願っている。だから……」

「皆、アカデミーを卒業した後、一人暮らしをする人が多いわ。でも、それが普通だと思うの。だって自分で稼いで自分で生活すると、立派になると聞くから。だけど、うちは……」

 イリアの話に、ソラは何も言うことはできないでいた。就職後、自立し広い世界に旅立つのは一般的だが、中には子供に過度な愛情を注ぎすぎた結果、子離れできない親も存在する。特にイリアの両親はその傾向が強く、このままでは永遠に足枷になってしまうかもしれない。

 だが、これについてはイリアの家庭の問題なので、ソラがあれこれと言っていいわけではない。また彼女自身実家から離れたいと思っているのだろう、言葉の端々からそのような内容が見え隠れする。それからわかるのは、彼女が両親と上手くいっていないというものだった。
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