エターナル・フロンティア~後編~

 リオルという名前の子犬との出会いは偶然なのか必然なのかわからないが、ソラにとっては偶然でも必然でもどちらでもいい。ただこの素晴らしい出会いに感謝し、これから先も共に賑やかな生活を送ることができればいいと考えている。平穏で荒波がない日々を願い。

 しかし本人が平穏を望んでも、周囲はそのことを許してはくれない。ソラは特殊な生まれ方をして、多くの人間が彼の力を求めている。結果、数々の事実が彼を追い詰め精神を蝕む。

 何故。

 どうして。

 レナに会ったら、プロジェクトの概要を全て聞きたかった。聞かなければ、心の内に生み出されたシコリを取り除くことができない。また、自分の育ての親の昔の姿を知りたかった。

 だから、自分の意思でユアンと共に行くことを選択する。たとえレナの口から身も心もズタズタに切り裂かれるような真実を言われても、ソラは全てを受け止める覚悟はできていた。その後、ソラはリオンと共にユアンの車でレナの自宅へ向かう。真実に近付く為に――


◇◆◇◆◇◆


 車内で交わされる会話は殆んどなく、古めかしい曲だけが流れていた。この曲は現在流行っている曲ではなく、何十年前というより何百年前に作曲された曲だとユアンは説明する。

 その説明に対しソラは、特に興味を示さないのか生返事を繰り返す。ソラの態度にユアンは車内に流れていた曲を止めようとするが、寸前でそれを制止このまま流していていいと言う。

「いい曲です」

「クラシックだ」

「ピアノですね」

「詳しいのか?」

「いえ。父が……この場合は、育ての親というべきでしょうか。昔、好んで聞いていました」

「趣味が合いそうだ」

 文明文化が発展しているので、それに比例して新しいものを取り入れていくのが普通だが、だからといって古い物を蔑ろにしていいものではない。古い物の中にも素晴らしい物が存在し、ユアンはどちらかといえば古い物が好きという。それが関係し、クラシックを好んで聞く。
< 8 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop