天才に恋をした
苗が吐息を漏らした。

「『好き』って言った」

「うん。お前はどう思った?」


すると苗は、ちょっと目を見開いて俺を見た。


「今…思った」

「なんて?」

「うれしい。ありがとう」



ヤバイ


ヤバイヤバイヤバイ。



メチャクチャにしたい。





苗の目に怯えが過り、後ずさるように腰を引いた。









―この欲求不満っ-



母ちゃんの言葉がよみがえった。



試合の前にやるように、ゆっくりと息を吐き出しながら、目を閉じる。

テラスから吹き抜ける風が、頬の熱を冷ました。

目を開けて、体を起こす。



「足、見せて」

「自分で…」

「やだ」

「く…くすぐったい…」




…サッカー部、マジで戻ろう。
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