天才に恋をした
部屋に戻って、陸玖に電話を掛けた。

手が汗ばむ。

悪い想像が過ぎる。



ちがう。

ぜったい、陸玖は出る。



―はい―



「俺。会って話したい」



しばらく間があった。


―いつ?―

「明日、学校で」

―分かった―


楽しげな感じではない。


「昼休みに、クラブハウスで」

―うん―

ぎこちない。





疲れた。




ベッドに体を投げ出す。

俺は、何を話すつもりなのかな。




苗のこと?

サッカーのこと?

信頼?

友情?



分からないままウトウトし始めた耳に、車庫の開く音が聞こえた。



…親父、背広姿のままだった。


会社に戻ったんだ。

俺と話すために、帰っただけなんだ…

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