天然ツンデレちゃんの日常
その足で、自分の部屋に向かう。


「あ、お嬢様今日の夕食は……」


「今日はいいわ。」


冷たく言うとメイドは悲しそうな顔で何処かに走っていった。


なんなの……


そんな光景を横目でチラ見しながらさっさと部屋に入る。


思いっきり一人で寝るには寂しすぎるキングベットにダイブする。


はあ……


つまらない……


全てがつまらない。


子供の頃からずっと思ってきた。


小学校に、入ると友達はできない、男共と女共の目線は痛いし、不純した言い分でいじめられる。


先生達には、心に思ってない言葉を投げかけられ、家でもそう。


メイド達は、お父様に気に入られようと必死。執事もそうだ。


執事……



あぁ、執事といえば一人だけ真っ直ぐに僕を見てくれる人がいたっけ……


ーコンコン


ドアのノック音で僕は我に返り枕に突っ伏していた顔を上げる。


「誰?」


「雅です」


あぁ、雅か。


そう、こいつが僕が唯一信じられる人。


僕は何も返事をせず頭から布団を被る。


すると、ガチャとドアが開く音とともにベットに近付いてくる足音。


「お嬢様、またお父様と喧嘩でもなされたのですか。」


雅は、ベットの側にくると、座る。


「お嬢様は短気ですね。」


少し笑った声混じりに言う。


なんか、ムカつく……


「別に短気じゃない。あんな父親がいれば誰でもムカつくだろ。」


冷たく言い放つと、クスクス笑う雅。


……っっ!!


僕は思いっきり布団をまくりあげて起き上がる。


「何がおかしいのよ!!///」


雅に笑われた自分が恥ずかしくなり、段々と頬が熱くなっていくのが分かった。


「いや〜、やっぱりお嬢様は、可愛いですね。」


そう言うと小さな子供をあやすかのように優しい手つきで頭を撫でてくる。


「こ、子供扱いするな///」


頭に乗っていた手を払い除けて膝に顔を埋める。


「お嬢様、拗ねないでください。ね?」


そうも言うがクスクスとさっきからずっと笑っている。


たくっ、なんなんだよ……//


口を尖らせる。


「でもまあ、良かったです。余り寂しそうにしてなくて。」


そう言うとニコッと微笑む


不覚にもドキッとしてしまった僕は顔をそらす。


なんだか、雅には昔から元気づけられてるばっかだな。


今だって……


なんだか、心が見透かされてる様で……


そう思うと何故か勝手に口が動いていた。


「僕は、今の高校を転校しなきゃならなくなった。」


雅は、目を見開いた。


「転入先は……」


はあ、それやっぱり聞くよ……ね。


「隣町の、凜々蝶学園という所だ。」


「え……」


隣町という言葉を聞いて今さっき見開いていた目をもっと見開いた。


そりゃ驚くよね。


家のすぐ近くの高校を転校して、転入先が隣町だなんて……


なんで……


「お父様はいつもそうだ。僕の意見をまともに聞いたこともないし、聞き入れようともしない。僕の事なんてどうでも良くていつもいつもいつもいつも……ッッ仕事ばかりだ……!!」


段々と涙がこみ上げてくる。


こう思ったのは何回目だろう……。もう何百回、いや何万回だろう。


小さい頃なんて、遊びもしてくれなくて、見向きもしない。


僕がまだ6歳の頃だ。


何時しかそんなお父様に腹を立てて書斎にコッソリ入って大事な資料に悪戯をしてしまった事があったっけ。


お父様が帰ってきた時なんて大騒ぎだ。


僕がやったと直ぐに気付かれ、次の日とそのつぎの日は、朝、昼、晩。


ご飯抜きだったし、その日から話すことも目を合わせることも無くなった。


そんな寂しい気持ちから僕から何かを感じるという事は無くなっちゃったんだ。


でも、一つだけ感じることが出来る感情があった。


それは。


『孤独』

『寂しさ』

だった。


「お父様は、僕のことどーでもいいんだ……!!僕のこと迷惑がっている……ッッ僕のことなんて……」


人の前だというのに無様な姿を見せて、高校生にもなって子供のように泣きじゃくる僕。


そんな僕の言葉を遮る様に雅が僕のことをギュッと抱きしめた。


「それ以上はダメです。言ってはなりませんお嬢様。」


いつもふざけててお調子者の、雅は、今だけ一段と何かが違った。


「……っっ!!」


僕の涙は止まらない。


そんな僕の頭を優しくそっと撫でてくれる雅。


雅はそんなお嬢様を見て少しだけ哀しそうな顔をしたのだった。


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