天然ツンデレちゃんの日常
「あーあ……毎回毎回、あんたらは学習しなさいよー。」


呆れ顔でシエルは呟く。


僕はと言うと、茹でたタコの様に顔面真っ赤にし、自分の部屋にいた。


「たくっ、本当にあの二人は学習しない!」


一歩一歩歩く事に文句を呟いて、ロッカーを思いっきり開けた。


そして、中には綺麗にアイロンされた凜々蝶学園の制服がかけてあった。


その他にも、小さな机みたいなものの上に小さな紫の蝶のイヤリングと、ネックレスが置いてあった。


なんだろう?と思いながらもまあ制服に着替える。


凜々蝶学園の制服は、凄くお嬢様っていう感じの制服だった。


全身鏡に自分が身にまとっている制服を見ながら流石お金持ち学校なんて思っていた。


黒色の長袖セーラー服で、襟と、袖とスカートの部分は白の横線が入っている。そして、スカートにはレースが少しだけ付いて、すっごく可愛いんだけど、

僕に似合うはずもなく今すぐ脱ぎ捨ててやりたいという気持ち一心だった。


最後に、膝ちょっと上ぐらいまでのニーハイを履く。


そして、イヤリングと、ネックレスを付けて準備完了。


っていいたいところだけど、このまま下に降りるのはとても抵抗した。


なぜかって?ワンピースの丈が短い!


多分膝上27cmくらいかな。


凄く恥ずかしい……


でも、ずっとこのままで突っ立てても行けないと思い自分の気持ちを抑え、鞄を持ってリビングへ再び向かう。


リビングからは、テレビの音と朝食を作る音しか聞こえないくらい誰も喋っていなかった。


あー、なんでこんな時に沈黙なの!?


ドアの前で意を決してドアノブを捻る。


「あ、お嬢様お着替えは済ませ……」


雅は僕の格好を見るなり顔を赤く染めて吃驚している。


「そ、そんなに見るなっっ!///」


余りにも長く見てるもので持っていた鞄で顔を隠す


「お……」


やっとのことで喋ってくれた雅を恐る恐る見てみる。


「お……?」


もしかして、僕が着てたらこの可愛い制服が汚れるから脱げとか言われるのかな。


あ、もしかしたら、てめーみたいなブスがそんな格好してんじゃねーよ的な!?


あー、もうなんでこんな不細工に産まれてきたんだー僕!


お母様ももうちょっと可愛く産んでくれないのかなー!(十分可愛く産まれてます)


っと、そんな事を考えていると、


「お……お嬢様ああああああああ!」


雅は僕のとこに走って来て飛びつこうしてくる。


そんな雅をすかさずよけて雅はドアに激突。


「う……痛い……!でもお嬢様はお美しい
!」


はあ?


「お嬢様!やっぱりお嬢様はお美しい!」


急に言い出す雅。


なんだなんだ?


「いや、でも、お嬢様は可愛いの方がお似合いなのか!?いや、美しいなのか。どっちでもいいが、とにかく美少女という言葉が正に似合う!しかも、その制服!お嬢様専用に作られたのかと思うぐらいお嬢様にお似合いです!背は小さいがその小ささが逆にいい!しかも、サラッとした胸下まである髪の毛!青紫というこれまたお嬢様ぴったりの色!目に入るか入りないかぐらいの丁度いいぐらいに揃えている前髪もまたいいです!高嶺の花というべきか、もう私どもには手に届かないぐらいの遠い人に思えてきます!あぁ、なんて美しんだ。こんな格好を見たら野蛮人共に襲われてしまうかもしれない。そうだ、いっそ監禁してしまおうか……」


長々と早口でいう雅は正に変態そのものだ。


僕をキラキラ光る瞳で見つめてくる。


聞いてるこっち側にもなってくれないかな!?すっごい恥ずかしんだけど。


なんだなんだとシエル達もキッチンから出てきて様子を見に来る。


3人のうち2人(シエルとイージー)は、またもや呆れ顔でこちらを見ていた。


そして、問題は……


「とぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!」


助走を付けて雅の背中へ走るミシェル。


雅は僕の語りに夢中になって後ろからくる災難に気付く筈も無く……


ミシェルは、怒った顔で雅の背中に突進を食らわした。


「いってぇぇぇぇ!!」


突進されたとうの本人は痛み苦しんでいた。


「おっまえ!何すんだよ!いってぇ……!」


半泣きになりながらも睨みをミシェルに効かせた。


そんな睨みを気にしてないミシェルは、すかさず雅に講義した。


「あんたねー!かえちゃんに何してんのよ!」


「はあ?何もしてねーよ!只美し過ぎるお嬢様にムラムラして思わず監禁させ…」


「だから!それがだめだってーの!こんの変態執事!」


「誰が変態だ!この怪力馬鹿メイド!」


「誰が馬鹿だってぇぇ!?」


「誰が変態だよっっ!」



はあ……


僕は睨み合っている二人を交互に見ながら深い深いため息をついた。


腕にしていた時計を見て時間を確認する。


確か、学校が始まるのが8時半。


でも、隣町だから乗り物通勤になるわけで……


電車で行くとして、電車は7時半出発。


そして、今の時刻は6時45分。



そろそろでないと間に合わないぞ……


そんな事を思いながら僕は手を叩く。


パンパンパンッ


「はいはい、2人とももうやめて。雅車出して、ミシェルは自分の仕事に戻りなさい。シエルとイージーも!」


シエルとイージーは、慌てて自分の仕事につく。



雅はミシェルと睨み合いながらも僕のところに歩いてくる。


「申し訳ございませんでした。お嬢様。今すぐ車を……」


「うん、よろしく頼む。それと、背中は大丈夫なのか?」


少しだけ心配になり、雅に聞いてみると雅は僕にうるうるとした瞳を向ける。


「お嬢様!お嬢様が、そのような心配をしてくれるなんて!雅、雅はとても感激で……ぐふっ!」


抱きついてきそうな雅を直前で止める。


「抱きついたらもう心配してあげないから。」


その言葉を聞いた雅は、主人に従う犬のようになり、ぴしっと体制を戻した。


「申し訳ございませんでした!今車を。」


そういってリビングから出ていった。


はぁ……まったく。







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