Sugar&Milk

「今少しだけいいですか?」

「はい?」

「お話があります……」

「遠慮します」

思わず即答してしまった。今は相沢さんに関わりたくなかったし、すごく急いでいたから。

「あの……」

いつもの相沢さんなら私をイライラさせる返しをしてくるのに今日は様子が違う。まるで拒否する私が悪者であるかのように暗い顔になってしまう。けれど私だって良い気分じゃない。

「相沢さんに引き留められたときに良い話だったことがないですから……」

平静を装うのに必死だった。年下の女の子を怖がるなんておかしな話なのは承知で、この子が心底怖かった。
周りから見たら相沢さんと睨み合っているように見えるかもしれない。通りすぎる人がチラチラと私と相沢さんを見ていた。

「大事なお話なんです……」

相沢さんは繰り返す。ここまで必死にお願いする理由は何だろうかと気になってきた。もしかして瑛太くんと関係があるのだろうか。

「すみませんが今急いでて……」

「お願いします……」

相沢さんに対して嫌悪しかないけれど、こうまで言われては話を聞いた方がいいのかもしれない。それに私も聞きたいことがある。

「分かりました。今は本当に急いでいるので、8時以降にしてくれませんか?」

「ありがとうございます。私も今日はシフト8時までなんで、8時半に少し歩いたとこにあるファミレスで待っててもらっていいですか?」

「はい」

「よろしくお願いします」

相沢さんは私に軽く頭を下げると、お店に戻っていった。
これ以上何か言われたら大人げなく怒鳴ってしまいそうで怖い。彼女はどこまで私を落ち込ませる気なのだろうか……。





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