Sugar&Milk

「瑛太くんに告白するって言ったから私が嫌がらせをしたとでも?」

「はい……」

「私ってそんなことする人に見えます?」

「…………」

無言なのはそう見えたということだろう。失礼な話だ。腹いせに職場に対して何かするなど、そんな子供っぽいことは絶対にしない。どんなに相沢さんが苦手で怒っていても嫌がらせなんて考えもしなかった。
私は溜め息をついてケーキを食べた。相沢さんは申し訳なさそうにうなだれる。

相沢さんにきたという苦情には納得できることもあると思い出す。以前山本とカフェに行った時、確かに相沢さんの声がうるさいと感じたことがあった。はっきりと聞き取りやすい声は大きめでよく通る。本人の話し方も押し付けるような印象を受け、人によっては高圧的に取るかもしれない。だけどそれが本社やお客さんから注意されたのはショックだろう。

「正直に言って相沢さんが苦手です」

私の言葉に相沢さんが顔を上げた。

「でも職場に連絡するとか、そんな卑怯な精神攻撃なんてしません」

きっぱりと言い切った私に相沢さんの目がだんだんと赤くなる。

「す……すいません……」

相沢さんの声は少し震えていた。

「苦情もされた方はショックだけど、悪い方にばかり考えないで。そこを直して自分が成長できるチャンスだから」

相沢さんは目を見開くと私から顔が見えないよう完全に下を向いた。肩が震え、鼻を啜る音が聞こえた。これは私が泣かしたことになるのだろうか。

「すいません……」

相沢さんは再度謝罪した。私を疑ったことへの謝罪か、泣いてしまったことへの謝罪か……。

私はしばらく無言でケーキを食べた。コーヒーを飲み終わって次のドリンクを取りに行き、戻ってきたときには相沢さんは顔を上げ、まだ目が赤いままチーズケーキを食べていた。
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