Sugar&Milk
私に強がったって、まだ大学生の女の子だもんな……。
思い起こせば大学生の頃の自分は子供だった。社会に出た今だって、ちっとも大人になった感じがしない。
「まだ私が苦情を言ったって疑ってます?」
相沢さんは首を左右に振った。
「もう疑ってません……」
「ならいいです」
「あの……もう一つお話があって……」
私は野菜ジュースを飲むのをやめた。
「何ですか?」
自然と身構えた。次はどんな不愉快な話だろうか。これ以上気分の悪くなる話は勘弁してほしい……。
「山本さんのことです……」
「山本?」
「はい。私を気にかけてくれてるのは嬉しいんですけど……申し訳なくて」
「相沢さんは瑛太くんのことが好きだから?」
「はい……」
再び相沢さんは目を伏せた。
「何度もはっきり言ってるんですけど……それでも会いに来てくれて……」
「私からも断ってくれってことですか?」
「お願いできれば……」
この子は私をイライラさせるところは変わらない。自分を好いてくれている山本に諦めろと言ってくれと頼める神経が理解できない……。山本とうまくいってくれる方が私には好都合なのだから。
「山本は悪いやつじゃないですよ」
「それは分かります。素敵な人です……」
素敵な人だと分かっているのなら、山本とうまく付き合ってほしい……。
「ふぅ……」
私は分かりやすい溜め息をついた。相沢さんは気まずそうに下を向く。
「気持ちを伝えるのを止める権利はない。そう言ったのは相沢さんですよね?」
いつか言われた言葉を思い出す。
「はい……」
「じゃあ私には何もできないし、山本に何も言えないです。そんな権利ないので」
「…………」