Sugar&Milk

私のせいで瑛太くんの生活の視野が狭くなったりはしないだろうか。確かに今は仕事を優先していてもいつかは結婚だって考えるかもしれない。そんな私と一緒に居て瑛太くんの重荷になったら……?
そのことを瑛太くん自身も感じ始めたから、私に怒って避けているのかもしれない。

「どうぞお幸せに。今まで色々とすみませんでした」

私に向かって深く頭を下げるから、もう私に構うのをやめるという意思を感じ取る。

「あの、相沢さん……瑛太くんと今後どうなるかは分からないけど、こんな風に呼び出されるなんて状況は初めてだから面白かったです」

こうして恋敵とお茶するなんてなかなかできる経験じゃない。いい経験したなと思ったけれど、相沢さんは私の言葉に不機嫌そうな顔をした。
帰ろうとカバンを持つと相沢さんが荷物と伝票を持って立ち上がった。

「いいよ、ここは私が払うから」

学生に払わせるのは申し訳ないからと私も立ち上がったけれど、相沢さんは「いいです! これくらい払いますから!」と大きな声を出した。

「私から誘ったから、私が払います!」

「でも……」

「彼女さんには本当に申し訳ないことをしました。ごめんなさい! 失礼します!」

周りのお客さんが相沢さんの声に驚き唖然と見つめる中、靴音を響かせレジへと歩いていった。

「苦情……反省してないのかな?」

思わず声に出してしまう。きっと本人は声が大きいことを自覚していてもなかなか直せないのだろう。
相沢さんに苦情を入れたと疑われたかと思ったら謝られて、本当に訳が分からない。

席に残された私は肩の力が抜けて座り込んだ。謝罪したすぐ後に元の態度に戻った相沢さんと、相沢さんの大声に対して思わず一人言を呟いた自分に笑ってしまう。
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