Sugar&Milk

友人は就職活動を不安がっているけれど俺は比較的楽に就職できそうだった。店長も俺を推薦してくれるし、その更に上の上司が店に来た時も前向きに話を聞いてくれた。

「だから最近店長とコソコソ話してるんだ?」

「就活楽してるようで申し訳ないけど」

「楽してるとは思わないよ。むしろこの会社でいいの?」

「大手じゃん。うまく入れたら安泰」

カフェを運営するのは株式会社早峰フーズ。業界では大手だ。アルバイトで入社して伝手を頼れたことは大きい。

「相沢も就職しても食べに来いよ」

「うん」

「…………」

「…………」

未来の話をすることで期待と不安が湧き上がって二人でしんみりとしてしまった。
相沢はカシスオレンジを飲み干すと、グラスを置いた。

「中山くん……」

「ん?」

「私ね、中山くんのことが好きだよ」

突然の言葉に箸が止まる。

「ありがとう、俺も」

「あのさ、勘違いしてるでしょ。今の好きっていうのは、同期としてじゃなくて恋愛の好きだからね」

「…………」

相沢は真っ直ぐに俺を見ていた。

「相沢、酔ってる?」

「だから私酔わないんだって! 人の真剣な告白に対してその返しは失礼だからね!」

「ごめん……」

俺の頭は混乱している。長く一緒に働いて、相沢が自分を恋愛対象として好きだということに気付かなかった。

「あの……いつから?」

「いつからかな。最近ではないけど、お店に入った頃はまだ好きになってなかった」

「そっか……」

「返事は?」

「えっ、あ……その……」

まさか相沢から告白されるなんて思ってもいなかった。

「ごめん……俺、彼女いるから」

「うん。知ってる」

「その人のこと、すっごい好きだから、相沢とは付き合えない……」

「うん」

< 112 / 148 >

この作品をシェア

pagetop