Sugar&Milk

「ごめん……」

「うん。もう謝らなくていいから」

「…………」

真っ直ぐ俺を見続ける相沢に申し訳なくて下を向いた。

「相沢の気持ち、全然知らなかった……」

「だろうね。気付かせなかったし」

以前『好きなやつはいないの?』という俺の質問に相沢は『いるけど彼女がいる』と返した。『だから別れるの待ち』と言った相沢の表情も声のトーンもはっきり思い出せる。

「私がもっと早く告白してたらさ……もしも彼女さんと付き合う前に告白してたら、中山くんは私と付き合ってくれた?」

もしも、朱里さんに出会う前に相沢に告白されたら……?

「分からない」

正直に答える。先に相沢に告白されていたら付き合ったかもしれないけど、朱里さんを意識してしまったら相沢と長く付き合っていないかもしれない。でもそうじゃない可能性もある。

「答えは出せないよ……」

「そっか」

「ごめん……」

「だから謝らなくていいって。分かってたから」

俺は顔を上げられなかった。相沢が今どんな顔で、どんな思いでいるのかを直視できない。

「私はね、多分先に告白してたとしても、彼女さんが中山くんの前に現れたら私が振られると思ってるよ。今も振られるって分かってて、それでも気持ちを伝えた」

「どうして振られるって分かるの?」

「彼女さんには敵わないから。二人お似合いだもん」

「そうかな?」

「うん。お客さんからご意見が来た時、私を励ました言葉が彼女さんと中山くん同じなんだもん」

「え?」

「下手な小細工したって、あの人には勝てないよ」

「朱里さんと会ったの?」

「中山くんの知らないところで何回も会ってるよ」

「いつの間に……朱里さんからそんなこと一度も聞いたことないよ」

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