Sugar&Milk
「あはは、だろうね。絶対中山くんには言わないと思った」
「何、どういうこと?」
どうして朱里さんは俺に言わないんだ。別に相沢と会ってもどうってことないけど、言ってくれてもよかったのに。
「大人の女には敵わないわ」
「さっぱり意味わかんないんだけど……」
「いいのいいの。あーすっきりした!」
相沢は晴れやかな表情で店員を呼ぶと、追加のレモンサワーを頼んだ。
「俺はすっきりしないんだけど……」
「あー! 彼氏ほしいー!」
突然の大声に驚く。相沢は朱里さんの話をこれ以上するつもりがないかのように。モヤモヤしたままでも相沢が話したがらないなら仕方がないと、「彼氏すぐできるって」と言った。
「中山くんがそれ言うとかサイテー!」
「だって山本さんは?」
「やだ! あんな女たらし」
山本さんは嫌だと即答したのに笑った。
「私とちゃんと向き合ってくれる人がいい……」
「山本さんは向き合ってくれなそうなの?」
「どうかなぁ……優しいし、怒ってもくれるけど」
「仲良いじゃん」
軽いノリの男の人だと思う。けれど俺や相沢よりもずっと大人だ。
「あの人と口喧嘩したら勝てる自信ない」
「相沢が口喧嘩で勝てないって珍しい」
「軽く受け流して、時にはグサッと刺す言葉を言う人なの」
嫌そうな顔をする相沢を見て俺は微笑む。俺なんかよりもよっぽど、山本さんの方が相沢に合うではないか、と。
「彼女さんは中山くんのことをちゃんと考えてくれそうだよね」
再び朱里さんの話になって俺は前のめりになる。
「そうなんだよね……俺は甘えっぱなしで疲れさせちゃってる。だから嫌になっちゃったのかな……」
「何その暗い顔。ケンカでもしたの?」
「まあ……俺が悪いっていうか……」