Sugar&Milk
あの時の俺だって悪かったのだ。素直に好きだと言って大事にすればよかった。
「ごめん……私不安で……」
元カノの目は潤み始める。
「瑛太くんと付き合ってた時に優しくしてくれた人に気持ちが移って……あとで瑛太くんと仲がいい人だって知った。本当にごめんなさい」
元カノは横に座る俺に向き合って頭を下げた。
「今も先輩とは付き合ってるの?」
頭を下げ続ける元カノの後頭部に質問をぶつける。すると元カノは小さく震えながら頭を左右に振った。
「今はもう別れた……先輩が就職しちゃったら全然会えなくって……」
「そう」
せめて今も順調に付き合っていてくれれば少しは救われると思ったけれど。
「瑛太くんからの連絡が来なくなって、面倒なことが起こらなくてよかった、なんて思って……」
「それは俺も。話し合う気力がなかった」
「裏切ってごめんなさい」
ポロポロと泣く元カノに俺は申し訳ないとか、怒りとか同情とか、そんな感情は不思議と湧かなかった。
「これですっきりしたよ」
ただ理由を聞いただけ。それだけでも気持ちが軽くなった。話し合えばこんなにも簡単に前に進むのに。
「泣かせてごめん。付き合ってた時にちゃんと気持ちを言葉にしなくてごめん」
元カノは何度も頷いた。頬から顎に伝った涙が落ちて彼女の服を濡らす。
周りの学生が俺たちを興味深そうに見てひそひそと話し合っている。居心地が悪くなり、俺は立ち上がった。
「じゃあね」
泣く元カノをフォローしないでその場から離れた。もう気にかけてあげるような関係ではなくなっていたから。
時間はかかっても話せてすっきりした。目の前の女の子を不安にさせてしまった結果、今こうなっているのだとも理解できた。
浮気した彼女に怒っていた。けれどその怒りを彼女と向き合うエネルギーにしなかった自分に後悔する。だからもう同じ後悔はしない。