Sugar&Milk
◇◇◇◇◇



『今駅に着いたよ。どこに行けばいい?』

電車を降りてすぐに朱里さんにメッセージを送る。すぐに既読になって『改札出ないで待ってて』と返信が来た。
駅の階段を上って曲がったところの改札の前に朱里さんが到着したのが見えた。俺の姿を確認すると小さく手を振ってくれる。その姿にホッとする。最後に会った気まずさを感じさせないから。

「朱里さん仕事だった?」

「うん。でもさっき帰ってきたばかり」

すごく久しぶりに会った気がする。数週間が数ヶ月にも感じる。

「歩きますか」

「私の家じゃなくていいの?」

「うん……俺、お邪魔しにくい……」

「そっか」

決まり悪くて家になんて上がれない。朱里さんはそれ以上何も言わないでただ歩き始めた。目的地を決めずに歩いているようで、駅から少し歩いた公園まで来た。

「取り敢えずベンチ座る? それともどこかお店入る?」

「座ろう」

だらだら歩くよりも落ち着いて話したい気持ちが大きい。公園に入ってすぐそばにあるベンチに朱里さんが座ったから横に設置された自動販売機で飲み物を買う。

「はい、朱里さん」

俺はロイヤルミルクティーの缶を渡した。

「ありがとう」

朱里さんがプルタブに指をかける間に俺は横に座ると、缶コーヒーをまるでビールを飲むかのようにごくごくと一気に飲み干した。緊張で喉が渇いていたから。

「やっぱお店の方がよかった? 今からどこかご飯食べる?」

朱里さんも落ち着かないのか顔をじっと見つめてくる。不安そうな目を俺に向けたから俺は首を左右に振った。

「朱里さん、この間はごめんなさい」

「うん……私もごめんね。瑛太くんを不安にさせるようなことをして」

「あれは俺の知らない朱里さんの人間関係に嫉妬しました」

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