Sugar&Milk
「嫉妬してくれて嬉しいとも思うけど、ああいう責められ方はちょっと困る」
俺は目を伏せた。
「実は俺、元カノに浮気されたことがあって」
「そうなの?」
「だから不安だった。朱里さんの気持ちが俺から離れちゃうのが」
「私が浮気するような女だと思った?」
「そうじゃないんだけど……俺が勝手に不安になって」
手の中の缶を握りしめる。朱里さんと元カノは違う。俺は元カノと比較にならないくらい大事にしてきた。
「俺のこと嫌いになったでしょ。思ったよりも子供で。まぁ実際まだ大人とは程遠いんだけど……」
「そうじゃないの。違うよ」
朱里さんは慎重に言葉を選んでいるようだ。
「私が至らなかったの。瑛太くんとの付き合いも自分中心に考えてたから」
「そんなことない。朱里さんは俺のこともちゃんと気遣ってくれてた」
自分を責めてほしくなくて優しく言葉をかけても朱里さんは首を振った。何かを決意したような表情に落ち着かなくなってゴミ箱に空き缶を捨てるために立ち上がった。ゆっくりとゴミ箱に入れる。底に缶が落ちるカコンという音が響いた。
そのまま朱里さんに背を向け続ける。顔を見ることができない。
「瑛太くん」
名前を呼ばれても振り返りたくなかった。振り返ったらいいことがなさそうな気がしてしまって。
朱里さんも立ち上がってゴミ箱に缶を捨て、真っ直ぐ俺の前に立って向き合った。
「瑛太くん」
もう一度名前を呼ばれたから今度こそ視線を逸らせなくなる。
「別れよう」
衝撃的な言葉に体が動かなくなる。
「なん……なんで?」
「やっぱり私たちうまくいかないよ」
「そんなことない……」
「私は瑛太くんにとって負担になると思う」