Sugar&Milk
「そんなことない!」
大声を出しても朱里さんは微動だにしない。
「俺、大学卒業したらちゃんと就職するから! 朱里さんを支えるから!」
「え?」
「学生の今はまだ現実味がないかもしれないけど、家賃も光熱費も、親の援助なしで俺だけで払えるようになるし」
「…………」
「そうしたらさ、一緒に住もう」
「っ……」
驚いたのか朱里さんは言葉に詰まる。暗くても俺の顔が真っ赤なのが分かってしまうだろう。油断したら涙も出そうで肩に力が入る。
「それって……」
「こんな俺が何言ってるんだって感じだけど……朱里さん守れるようになるから!」
「瑛太くん……」
「就活もうまくいきそうなんだ! 将来の方向性も決めた!」
「待って……」
「当然その未来に朱里さんもいるから! だから別れたくない!」
「ごめんなさい……」
朱里さんの目から涙がこぼれる。
「就職してからは慣れるまで大変だと思う。負担になりたくない」
「負担になんて思わない! 心配なのであれば、だからこそ朱里さんにそばに居てほしい!」
「私が無理なの……」
「無理って?」
「会いたいのに遠慮しちゃうの。仕事も恋愛も、中途半端にしてしまう」
「一緒に住んだらそんなことにはならない! だって毎日一緒なんだよ?」
それでも朱里さんは首を横に振る。
「瑛太くんはこれからたくさんの出会いがある。私だけに縛られることはない」
「縛られてるんじゃない! 朱里さん以外に惹かれたりしない!」
「私の態度一つで瑛太くんを振り回したくない」
「そんなこと気にしない!」
別れるなんて怖くて堪らない。朱里さんがいなくなるなんて考えられない。
「俺のこと嫌いになった?」
潤んだ目を向けた朱里さんが首を振ると涙が揺れ落ちる。