Sugar&Milk
これだけの返信メッセージに数分要してしまう。
『今夜でもいい? もしかしたら10時近くになるかもしれないんだけど』
親しげな口調に戻ってほっとする。
『大丈夫』
『遅くにごめんね。まだ同じマンションに住んでる?』
『うん。変わってない』
『じゃあ近くに行ったらまた連絡する』
あと数時間後に瑛太くんに会えると思ったらもう仕事どころじゃない。私はフロアに戻ると急いで帰り支度をする。
「帰るの?」
武藤くんがいつもと様子の違う私を不思議そうに見る。
「うん」
「いいことあったんだね」
「え?」
「相沢さんの部屋に行く前の山本くんと同じ顔してるよ」
そう言われて顔が火照ってくる。結婚式を控えた山本は頻繁に有休をとって相沢さんと準備をしているようだ。浮かれまくっている山本と同じ顔をしているなんて恥ずかしい。
「ゆるゆるの山本の顔と一緒にしないで! お先です」
足取りも軽くフロアから出た。
家に着くと急いで夕食を済ませて瑛太くんを待った。メイクも念入りに、服だって出勤するよりも気合が入っている。自分から振った元カレと会うのにこんなにも意識してしまうなんて呆れるけれどやめられない。
『今駅に着きました。マンションまで歩くね』
メッセージを読むとすぐにエントランスまで降りて待った。
道の奥から近づいてくる人が見えると緊張で胸が苦しくなる。
3年前の彼はまた私に好きだと言いに来ると言った。私への気持ちは変わらないって確信していると言った。だから自然と期待してしまう。
もうお互いの顔が見える距離まで来た。3年ぶりに見た瑛太くんは背が伸びたわけでもないだろうに高く見えたし、顔つきが大人っぽくなった。私はどう見られているのだろう。老けたと思われていないだろうか。印象が変わったらやっぱり復縁なんて無理だと思われないだろうか。