Sugar&Milk
視界が霞んでくる。涙が今にもこぼれそう。就職してまだ経験が浅いのに副店長に抜擢されたことにも驚いたけれど、あの場所に戻ってきたことに縁を感じる。
「そこそこの大手。収入もそこそこあります」
「うん……」
「朱里さんと対等になったつもり……ってまだ入社歴が浅いんだけどさ」
「うん……」
私は頬を伝う涙を袖で拭いてそのまま顔を隠す。本当に来てくれるなんて胸がいっぱいで涙が止まらない。
瑛太くんは「ここに座ろう」とマンションの前のガードレールを指さす。紙袋からアイスティーのカップを出すと私に手渡す。ふたを開けるとガムシロップとミルクを入れて軽く混ぜる。
「バイトの時と違って社員になったら今まで知らなかったことを経験して、めっちゃ大変だなって思った。毎日疲れるし好きな業務ばかりじゃないけど、朱里さんもこんな感じだったのかなって思ったら頑張れた」
瑛太くんはアイスコーヒーを飲みながら「自分の時間を作るのって大変だね」と笑う。
「誰かのことを考えながら生活することって、簡単だけど維持することが難しいって知った」
そこまで言うと瑛太くんは黙ってしまったから私はアイスティーを飲んだ。記憶にある味とは少し違っていたけれど、さっぱりしていておいしい。涙を流しながら飲む私がおかしいのか瑛太くんは微笑んだ。
「朱里さん、今付き合ってる人はいる?」
私は思いっきり首を左右に振る。それを見て瑛太くんは安心したように息を吐いた。
「瑛太くんと……別れてから……誰とも付き合ってない……結局瑛太くんを待ってた……」
嗚咽を堪えながらの言葉を瑛太くんは遮ることなく聞いてくれる。