Sugar&Milk
「朱里さん、俺と付き合ってください」
ずっと聞きたかった言葉なのに胸がいっぱいになってしまい言葉が出ない。その代わりに涙は溢れる。
「朱里さん、泣かないで。ね?」
瑛太くんは私の肩を抱いた。その腕は3年前と比べて大きくなったように感じる。私の髪を撫でる手には指輪が嵌められ、街頭に反射して光るのを見た。
「この指輪……」
「今でも大事につけてる。仕事中は食材を触るからだめなんだけど、それ以外はずっと。朱里さんを忘れたことはなかった」
私が指に通すことのできなかった指輪を瑛太くんは今も外すことはないのか。一方的に振った私を瑛太くんは3年間忘れないでいてくれた。
「朱里さんの答えが欲しい。朱里さんにとって俺は重荷? まだ俺じゃだめ?」
「そんなことない」
重荷なんてとんでもない。離れていた間に想像以上に大人になった。とても年下と思えないほど色気も増したように思う。
何度も後悔した。何度も連絡しそうになった。その度に私の方が瑛太くんの重荷になるからと律してきた。でももうそれも限界だ。
「瑛太くんと付き合いたいです。よろしくお願いします」
笑顔を向けると、顔を真っ赤にして「よっしゃ!」と笑顔を見せた。
「朱里さんが大好きです」
「私も、瑛太くんが大好き。これから先もずっと」
そう言ってどちらからともなく唇を合わせた。コーヒーのほろ苦い味とシロップのほんのり甘い味がした。
「待たせてごめんね」
瑛太くんの言葉に私は首を振る。離れた期間はお互いにとって必要な時間だったから。