Sugar&Milk

カフェ店員と愛、育みました

◇◇◇◇◇



リニューアルオープンして日が浅いカフェは評判がいいようで、どの時間に行っても満席でランチタイムには入店待ちの列ができている。副店長の瑛太くんは毎日忙しく、付き合い始めたと言っても何か進展があるわけではなかった。以前なら私も打ち合わせで利用したり、仕事の合間に頻繁に行くことができたのに今はテイクアウトを頼むにも時間がかかる。

仕事中の瑛太くんが学生時代と変わったことはカフェの前を通っても手を振らなくなったこと。私と目が合ったら満面の笑みで手を振っていたのに、今では社員としての責任感が芽生えたのか笑顔を向けてくれるだけ。
早番の日に待ち合わせてご飯に行こうとしても忙しくてお店を離れられないことが多々あった。この後も約束をしているのにまだ中で働いている。私は仕事の邪魔にならないようお店の前で待っていた。
仕事中の瑛太くんはやっぱり接客態度や動きが落ち着いてきたように思う。アルバイトの女の子へ指示をしている姿も、電話をしながら何かを考えている顔も、記憶の中よりもずっとしっかりしている。
私よりも少し年上の社員らしき女性が瑛太くんに何かを言っている。すると瑛太くんも向かい合って話している。真剣な顔から笑顔になった。何か面白い冗談でも言ったのだろうか。

従業員の雰囲気も良さそう。瑛太くんにとっていい職場なんだろうな。

こうして瑛太くんが仕事を終えるのを待っているのも懐かしい。以前なら早く会いたくて堪らなかったけれど、今は成長した恋人の働いているところをいくらでも見ていられる気がする。
瑛太くんが中から私のことを見てくるから、こうして職場の前で待っているなんて急かしてしまっているのかもしれないと後悔する。少しでも早く会いたいから彼が見える位置にいるなんて重たくて呆れられてしまうかもしれない。どこか他の場所に移動して待っていようと思ったときに瑛太くんがお店から出てきた。

< 133 / 148 >

この作品をシェア

pagetop