Sugar&Milk

「もしかして、瑛太くんから私に連絡くれなくても、二次会で再会してたかもしれないってこと?」

「そういうことだね。俺はそうなるって知ってたし、山本さんも知ってたと思うよ」

あいつはそんなこと一切言わなかった。私と瑛太くんが別れたと知ったときは復縁しろとしつこく言ってきたのに。何も知らずに再会して私の反応を楽しむつもりだったのならたちが悪い。

食事を終えてウエイターを呼んだ瑛太くんはさっとクレジットカードを差し出したから私は焦ってしまう。

「ここは俺が出すよ」

「でも……」

「今夜は絶対に朱里さんに出させないって決めてたの。前に出させてくれなかった仕返し」

いたずらが成功したかのように笑うとスマートに会計を済ませた。

「ごちそうさま」

店を出ると満足そうな瑛太くんにお礼を言う。

「家まで送るね」

「瑛太くん今どこに住んでるの? もうあのアパートにはいないの?」

「うん。朱里さんの家とは反対。お店の駅も越えて数駅。今はマンションなんだ」

そうか、もうあのアパートに瑛太くんはいないのか。アパートの最寄り駅を通り過ぎるたびに意識してしまっていたけれど、既にあそこには住んでいなかったんだ。

電車に乗って私の家の最寄り駅で一緒に降りてくれる。改札まででいいと言ったのに夜遅いからと私のマンションの前までついてきてくれる。

「送ってくれてありがとう」

「うん」

楽しい時間はもう終わり。あとは別れの言葉を言って部屋に戻るだけ。なのにその言葉が言えない。もっと瑛太くんと一緒にいたいと望んでしまう。

「あの……」

部屋に来る?
その言葉が出てこない。招いた後のことは何も考えていない。でも今日を終わらせるのが名残惜しい。

「ん?」

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