Sugar&Milk
「広いんだね。すごく綺麗にしてるし」
「うん。そのうち色々と増えてもいいようにしてる」
何かを増やす予定があるのかと聞こうとすると「朱里さんは座ってて」とリビングの真ん中に置かれたテーブルの前に座らされる。そのテーブルだけはアパートの時から見覚えのあるものだ。
瑛太くんはあらかじめ仕込んであったのだろう料理を冷蔵庫から出す。
「全部瑛太くんが作るの?」
「そう。一応飲食業なんで」
てきぱきと準備する姿は初めて見る。学生の頃は私が作ったご飯を食べることが多かった。知っているはずの男の子は私の知らない大人の男になっていく。
テーブルに並んだ料理はお店で出されたかのように見た目も綺麗で美味しい。
食後には「クリスマスはもう終わっちゃったけど、ケーキも作った」と瑛太くんが冷蔵庫から箱を出してきた。
「え!?」
「オーブン無いから作ったのは店でなんだけど」
テーブルの中央に置いた箱から出てきたのはケーキ屋で売っているものと遜色のないチョコレートケーキだ。
「え、これって作れるの?」
驚きすぎて発した言葉に瑛太くんは「作れるよ」と笑いながら返事をする。
「食べきれないから、半分は明日の朝食べよ」
私たちにはお決まりだった。ホールケーキの半分は次の日の朝に朝食として食べるのが。
半分にカットされたケーキを冷蔵庫に入れる瑛太くんはそのままお湯を沸かし、戻ってきたときにはカップを持っている。紅茶を淹れてくれたカップの中には既にミルクと砂糖が入っている。もてなしが完璧で、再び緊張してくる。ご飯を食べるってイベントは終わった。泊まることを前提できているのだから、あとやることは残り少ない。