Sugar&Milk
先ほどまで向かい合って座っていたのに、今は私の隣に座り直すからフォークを持つ手がぎこちなくなってしまう。
「ケーキ美味しいよ」
お世辞ではなく瑛太くんの作ったケーキは美味しい。カフェが繁盛しているのも納得だ。
「よかった。自信ついたよ」
「自信?」
「自分の料理の腕に」
瑛太くんはケーキを一口サイズになるようフォークを上から差し込んでカットする。
「あのさ……」
瑛太くんは何かを言いにくそうに話し始める。
「今の俺の仕事、学生の時と変わらず店舗勤務だけど、目標はいずれ本社に異動して店舗管理をやるつもりなんだ」
「そうなんだ」
希望や夢を聞いたことがなかった。そういうことも考えるようになっていたんだ。
「ある程度の役職就くくらい上に行く。そしたらお給料もアップするよ」
「うん。上昇志向って大事だよね」
「俺やりたいことみつけたんだ」
「何?」
「いつか自分の店を持ちたい」
力強い言葉に瑛太くんから目が離せない。
「今の会社で接客と経営を学んで、将来店を持ちたい」
「そっか……」
未来の話を教えてくれることが嬉しい。そこに向かって進んでいく瑛太くんをずっとそばで見ていられたらいいのにと願わずにはいられない。
「そのときは朱里さんにも協力してもらえたら嬉しい」
「私?」
「好きな仕事をしながらでいいから、朱里さんの経験を活かしてもらえたら嬉しいなって」
ここまで考えていてくれたかと思うと嬉しくて言葉が出ない。
「そうしたらさ、俺でよければ……結婚……して」
「え?」
突然の言葉に驚いて瑛太くんを見つめる。彼は私から目を逸らさない。
「結婚を前提に、俺のそばにいてほしいです」
今まで見たことのない真剣な顔で私を見返す。