Sugar&Milk
「そんなことを思ってもらえるようなことは何もしてない……」
「してくれたよ。朱里さんは俺の特別」
瑛太くんの目も潤んでいく気がする。その手は私の頭を優しく撫でる。
「相沢とか朱里さんの同期が結婚したから俺も勢いでプロポーズとか、そういうんじゃないからね」
そう言うとテーブルの下に置いていた瑛太くんのカバンの中から何かを取り出した。私の目の前に差し出したそれは青い小さな箱。開かれた中にはダイヤの指輪が光る。
「朱里さんと付き合っていたから自分を見つめ直せたし、一度別れたことも大きかった。これから先一緒に生きていけたらもっと成長して、お互いを大事にしていけると思う。今の俺なら覚悟と責任能力がある。だから迎えに来た」
泣き続ける私の左手を取ると、薬指に指輪を嵌める。それはかつてお揃いで買った指輪と同じくぴったり指に馴染む。
「サイズ……ぴったり……」
「このペアリングが左手にもちょうどってことは、同じサイズで問題ないと思って朱里さんがプレゼント選んでるときに買ったの」
右手のピンクゴールドの指輪を撫でる。ショッピングモールの駐車場で左手にも嵌るのか確認していたのだろう。では今日は初めからこの指輪を私にくれる予定だったのだろうか。
「これからも何かに不安になっても、その度に二人で乗り越えていければ俺は幸せ」
私が何度も何度も頷くから涙が揺れ落ちる。嬉しくて言葉が出ない。
「ほんともう泣かないで」
私の肩を引き寄せて抱きしめる。
「瑛太くんと結婚する」
小さい声で、でもはっきりと口にする。
「急がなくていいよ」
「ううん……私も瑛太くんと同じ気持ち」
ずっと私のことを想ってくれていた。そんな彼からもう離れられるわけがない。来年も10年後もその先も、瑛太くんがそばにいてくれるのなら私は幸せだろう。