Sugar&Milk
「結婚しよう」
そう言った瞬間瑛太くんの顔が近づき唇が重なる。触れては離れて、角度を変えて何度も擦れ合う。私の口の中に瑛太くんの舌が侵入するとチョコレートクリームの味がして、貪るように唇を求め合う。私の涙で瑛太くんの頬まで濡れる。
息が荒くなってくると瑛太くんが体重をかけ私の体が押され床に倒れこむと色気の増した表情で私を見下ろす。
「朱里さんごめん……俺もう余裕ない……」
それは私も同じだ。深いキスだって久しぶりなのに、それ以上のことは体がすくむ。
「最後にしたの、朱里さんとが最後だから……」
「他の女の子と付き合ったりしなかったの?」
「うん。朱里さんだけ」
先ほどまでの大人びた様子とはかけ離れた真っ赤な顔が可愛くて手を伸ばして瑛太くんの頬に触れる。
私だってキスもそれ以上も、瑛太くんとの記憶しか残っていない。もう誰にも上書きされたくなかったから。
「私も。最後に瑛太くんとしたっきりだよ」
そう言うと瑛太くんは屈んで私の首にキスをする。そのまま唇を這わせて鎖骨を啄む。くすぐったくて身をよじると耳元で「ベッドに連れてっていい?」と囁く。頷くと背中に手を入れられて体を起こされる。膝の裏にも腕を添えられてそのまま持ち上げられた。初めて瑛太くんに抱き抱えられて、あまりにも軽々と移動するから驚いて首に抱き着く。
いつの間にか私を支えられるくらい大きな存在になっている。初めて会ったときはオドオドして変な子だな、なんて思っていたのに。
ベッドに優しく下ろされると高揚して体が熱くなる。もう私は瑛太くんのいない生活なんて考えられない。私の未来は甘くて、穏やかで、苦さなんて瑛太くんがかき消してくれるのだろう。
熱い唇の優しいキスに浸るように目を閉じた。
END