Sugar&Milk
「手繋いでいいですか?」
「うん……」
私は照れながら自分の手を重ねた。
中山くんは年下なのが信じられないほど積極的で、これでは私が振り回されているような気になってくる。今も初めて恋人らしいことをして、それを先に望んだのは中山くんだ。ぎゅっと握った手は暖かい。
この子と付き合ってるんだな……。
改めてそう実感した。これから先恋人ならデートしたり、キスしたり……それ以上もあるわけで……。
考えると照れてしまい、一人で恥ずかしくなる。こんなことを考えるのも久しぶりだ。
仕事終わりに彼氏とご飯に行くなんて、本当はすごく嬉しい。元カレとはすれ違ってばかりで最後はまともに食事に行く時間も取れなかった。だから「楽しみ」と思わず呟いてしまった。
「俺もです」
ひとり言のような呟きにも返してくれることが嬉しかった。
駅前の創作料理店に入ると店内はほぼ満席だった。オーダーしてから料理が運ばれてくるまで少し時間がかかったが、中山くんとの話に夢中で気にはならなかった。
「今日は朱里さんが仕事してるとこ見れて嬉しかったです」
「私は全然集中できなかったけどね……」
「俺はいつも以上に集中できました」
中山くんの笑顔に言い返す気も失せる。でもその笑顔に癒されるのも確かだった。
最後のデザートを頼もうかとメニューを見ていたとき、店内の照明が暗くなりBGMが華やかな曲に変わった。店員が厨房からホールケーキを手に持って現れると、私と中山くんの隣のテーブルに置いた。
「お誕生日おめでとうございます!」
どうやら隣に座ったカップルの女性が誕生日のようだ。店内のあちらこちらで雰囲気に呑まれ拍手が起こる。カップルは照れながら周りに会釈し、私たちも直接隣の二人に「おめでとうございます」と言った。