Sugar&Milk
今度の会計は私が払うと言ったけれど中山くんは譲らなかった。レジの前で「払います!」と必死になるから「いい。今日は私が出すから」と制した。中山くんはお金を渡そうとしたけど一切受け取らず、足早にお店を出てきた。
「お店がお祝いしてくれるって嬉しいよね。残念だなー、私の誕生日って先月だったんだよね」
駅まで歩きながら先ほどのカップルを思い出していた。誕生日を喜べるような年齢ではなくなった。けれどもしその時そばに中山くんがいたらまた違った楽しさがあったかもしれない。
「そうなんですか? じゃあ遅くなったけど今度お祝いしましょうか」
「いいよー……来年で」
言ってからハッとした。来年まで中山くんとの関係が続いているかは分からないのに言うべき言葉じゃなかったかもしれない。私はどこかで中山くんとの関係は長く続かないような気がしていた。
「そういえば中山くんは誕生日いつなの?」
「実は俺もうすぐなんです」
「じゃあお祝いしなきゃね」
「朱里さんに祝ってもらえるなんて嬉しいです」
「21歳になるの?」
「はい」
私が25歳になって中山くんが21歳。4歳ならそこまで年の差はない。でもどうしてもその4年を意識してしまう。
「どんなに誕生日が来ても朱里さんには追い付けないなー」
「ごめんね年上で……」
思わず暗い声を出す私に中山くんは「俺が好きになった人がたまたま年上だったってだけ。おね―さんの朱里さんを好きになったからいいの」と呟く。
「あの……朱里さん」
「ん?」
「俺ってそんな子供に見えますか?」
「え?」
「朱里さんから見たら俺はまだお子様に見えますか?」