Sugar&Milk

そうして退店する女性の姿が見えなくなるまで目で追った。もう一度、あの人と目が合わないかな……なんて期待して。

自分でも自覚し始めていた。一目惚れという表現が一番近いかもしれない。でも容姿だけに惹かれたわけではない。もちろん好みのタイプではあるけれど、カフェの従業員にまで気遣いができる彼女には大人の女性としての魅力を感じた。





橘朱里。
彼女の名前を知った時の俺の顔がにやけ過ぎて引かれていないか心配だった。
勇気を出して気持ちを伝えて、彼氏彼女になれたのが嬉しくて夢なら覚めないでと願った。
当たり障りのない挨拶程度のメッセージでも返信がくると舞い上がった。頻繁に連絡したかったが、あまりがっついてるとも思われたくなかった。とにかく嫌な印象を持たれないように必死になる。
会いたくて堪らないのに残業も休日出勤も多い朱里さんの顔を直接見ることのできる時間は少ない。授業もバイトも放り出してでも会いたいと呟く俺に仕事を何より大事にしている朱里さんは怒る。

「大学生活もバイトも、今しか経験できない貴重な時間なんだよ。私だって大学生に戻れるなら戻りたいよ」

本気でサボりそうな俺を朱里さんは真剣に怒った。夢中な俺とは違って冷静な彼女に寂しいなーと思う反面、怒っても可愛い顔をまた見たくて本当にサボって会いに行ってしまおうかと思う。
でも嫌われたくない。呆れられたくない。もう後悔ばかりの恋愛をしないって決めたのだから、距離感を意識して気持ちを伝えなければ。





今夜はカフェに同じタイミングで入った相沢 優衣(あいざわゆい)とラストまで二人でのシフトだった。
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