Sugar&Milk

店を出るときに手を振ると、朱里さんも小さく手を振り返してくれた。それを見た同僚の人たちは俺に向かって会釈して出て行った。バカップルだと思ったかもしれないのに、からかわないところが大人な感じがして不安になる。





俺の誕生日が来週に迫った。当日は朱里さんも仕事が休みになるという奇跡が起きた。

「プレゼント、何がいいか全然分からないから一緒に選んでくれる?」

「はい!」

俺の勢いの良い声に電話の向こうの朱里さんも笑った気がする。
朱里さんと誕生日に会えるだけでも嬉しいのにプレゼントなんて最高すぎる。会社の人と居る朱里さんを見てからは欲しいものができていた。

「欲しいものは大体決まってる?」

「お揃いの指輪、とか言ったら朱里さんは引きますか?」

「え……指輪?」

あ、これは朱里さん困っているかもしれない。付き合い始めたばかりで重いかもしれないけど、俺はどうしてもペアリングが欲しかった。

「会えないときはそれがあったら寂しくないかなと思って……」

我ながら子供っぽい理由だ。寂しいのも理由の一つだけど、本当は指輪を嵌めてくれていれば他の男が近づきにくいだろうと思ったから。

「うん、いいよ」

「やった」

嬉しさに思わず呟くと朱里さんは笑ったのか吐息が聞こえる。どうやら呆れられてはいないようだ。
電話でおねだりしてよかった。指輪は嫌だって顔を見て言われたら立ち直れないし、嫉妬で不機嫌な俺の顔を見られないから。



◇◇◇◇◇



休憩中に事務所のイスに座りながら陶器のカップに口をつける。

「はぁ……」

ホットのダージリンティーを飲みながら、LINEの画面をじっと見て溜め息をつく。
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