Sugar&Milk
朱里さんに毎日でも会いたいのに誕生日まで直接会えない。土日も仕事のことが多いなんて社会人って結構大変なんだな。うちの会社の社員さんも普通に土日も出勤しているし。
扉をノックする音がしてドアが開き、「おはよー」と相沢が事務所に入ってきた。
「おはよ」
「中山くん休憩?」
「店長が今日定時上がりだから、俺が早めに休憩」
「あー……またラスト私と中山くんか」
「いつも変わらないね」
「新しい人なんて全然入らないしね」
相沢は俺の後ろを通ってロッカーに荷物を置くと、俺が座るイスとの間にあるカーテンを閉めた。カーテンの向こうで着替え始める気配がする。
俺は再びスマートフォンを睨む。しばらく無言の事務所内で相沢が着替える物音だけが聞こえる。
「はぁ……」
再び溜め息をついたと同時に相沢がカーテンを開けた。
「中山くんさぁ、彼女できたの?」
「え……何で?」
「最近溜め息多いし。スマホばっか気にしてる。あと、客の女の人に手振ってるでしょ。あの人が彼女?」
「うん……まぁ彼女です」
「そっか……」
お客様でもある人と付き合うなんて怒ると思ったのに、予想に反して相沢は怒らない。微妙な顔をしているから呆れはしているのかもしれないけれど。
「一応周りには内緒にしといて。今も店に来てくれるお客さんだし、特に店長にバレると面倒だから」
「うん、分かった……そっかぁ、中山くんに彼女か……」
「何?」
「ううん……意外な感じの人だなって」
「俺には似合わなそう?」
他人から見ても朱里さんとの関係は不自然に見えるのかと不安になった。
「違うよ、あっちが中山くんに似合わないかなって」
意外な答えに驚いた。