Sugar&Milk
「そう? 年上だから?」
「ううん……気にしないで。ごめんね、彼女さんなのに変なこと言って」
「別にいいけど……」
やっぱり年上の社会人と付き合うのは相沢から見ても微妙なのだろうか。
俺はスマートフォンで時間を確認した。そろそろ休憩時間が終わる。
「俺、店に戻るよ」
「うん。あとでねー」
俺は飲み終えたカップを持って事務所を出た。事務所のドアが閉る直前に相沢が溜め息をついた気がした。
いつも以上に長く感じた数日が過ぎて、俺の誕生日に駅で待ち合わせて大型ショッピングモールに向かう。当たり前に手を繋ぐ俺に朱里さんは照れながらも拒否することなく歩いてくれる。
指輪が並ぶショーケースの前に立つと俺は指輪じゃなくて朱里さんの視線を追う。
「瑛太くんどれがいい?」
「朱里さんが選んでください」
「え? 私が?」
「朱里さんに似合うデザインがいい」
「でも瑛太くんの誕生日なんだから……」
「お揃いでつけてくれるだけで嬉しいんで、朱里さんの気に入ったものにしましょう」
そう言うと朱里さんは困った顔をして真剣に指輪を見つめる。
「じゃあこれにしよう」
朱里さんが選んだのはピンクゴールドの太めのデザインのものだ。
「瑛太くんにも似合うよ」
右手の薬指に嵌めると、言われた通りしっくりくる。
「うん! 俺も気に入りました」
嬉しくて思わず大きい声を出す俺を見て朱里さんは微笑む。
クレジットカードを出して支払いをしようとするから俺は横から釣銭のトレーにお札を滑り込ませる。
「えっ、いいよ私が買うんだから」
「半分は俺が」
「それじゃプレゼントにならないじゃん」
「お揃いでつけてくれることがプレゼントなのでいいです」