Sugar&Milk
「でもそれじゃ私が納得しないよ!」
「じゃあ先月の朱里さんの誕生日の分」
「でも……」
「お願い」
レジ前で揉める俺たちを見て店員さんは気を利かせたつもりなのかそれぞれの指輪をカード払いと現金払いにしてくれた。朱里さんは納得していないようだけど俺はそれで満足だ。
その場で購入した指輪を右手の指に嵌めてから店を出た。
ショッピングモールの通路の天井に向かって指をかざす朱里さんは嬉しそうだ。その様子に俺も嬉しくなる。
でも朱里さんは今までの恋人とお揃いのアクセサリーをつけたことがあるのかもしれない。あってもおかしくないのだ。
知りたいようで知りたくない。ペアリングは初めてだといいなと願う。
お洒落なダイニングバーで食事をした後は「ケーキ食べたいです」と言ってケーキ屋に寄るために歩きだす。
「どこで食べる? 店内で食べてく?」
「持ち帰りにして俺の家で食べます。朱里さんもどうぞ」
さり気なく誘ったつもりだけど朱里さんは何かを察したのか「うん……」と歯切れ悪く答えた。
「朱里さん、誕生日ケーキはホール派ですか? ショートケーキ派ですか?」
「え? 何派とかあるの?」
「俺の実家ではケーキは家族が好きなものをそれぞれ買って食べる派でした」
「そうなんだ? 私の家はいつもホールのケーキを買ってるよ。その日のうちに食べられないと次の日の朝ご飯に食べるのが特別な気がして嬉しかったな」
「やっぱホール派が多いですよね。俺の親はそれぞれ別々派なんですけど、写真に残すと見栄えが悪いのが難点だって言ってますし」
「じゃあ今は好きなケーキを個別で買うの?」
「いえ、今日はホールを買います」