Sugar&Milk
武藤という人の質問に緊張しながら「カフェラテの上にホイップを絞り、シナモンパウダーとシナモンフレーバーのシロップをかけた甘めのコーヒーです」と答える。
「じゃあそれで」
「うわ……聞いてるだけで甘そうな飲み物……」
山本さんは顔をしかめるとまたメニュー表に視線を移す。
「ねえ彼氏くん」
「は、はい」
『橘朱里の彼氏』と認識されていることにほんの少し気分を良くした。
「橘っていつも何飲むの?」
「え?」
「この間はロイヤルを奢ったんだっけ? 今日もあいつに奢るんだけど、値段高めだから違うのがいいんだ」
「あ、えーと……それならホットのダージリンで……」
「じゃあそれで。エビサンドもつけてください」
山本さんはすぐに相沢に向き直すと笑顔で伝える。
俺は急激に気持ちが沈んだ。何度も奢ってあげるなんて、やはり山本さんにとって朱里さんはそれぐらい気安い相手なのだ。
「ご注文は以上でよろしいですか?」
「はい」
「1600円でございます」
山本さんは有名ブランドの財布から一万円札を相沢に渡した。
「僕も出すよ」
武藤さんがそう言うと山本さんは「いいって。今日も俺が誘ったんだから奢る」と得意げな笑顔を見せる。
「ありがとう」
「8400円のお返しでございます」
相沢は淡々とした口調でお釣りを渡した。
「うん、ありがとう」
山本さんはニコニコとお釣りを受け取った。
後ろに客が並び始め、山本さんと武藤さんは一歩横に移動して持ち帰り用の紙袋の準備をしている俺の前に来た。
「いつも朱里さんに奢ってるんですか?」
俺は思わず山本さんに声をかけてしまう。