Sugar＆Milk

「全部甘いやつじゃん」

「山本さんが嫌いなものが私のおススメです」

相沢は怖いほど無表情で話す。

「酷いねーほんと」

そうは言いながらも山本さんはニコニコと笑う。

「シナモンロールラテはこの間飲んだから違うのがいいな」

「じゃあ塩キャラをシロップ増し増しで」

「え……増し増しにしなくていいよ」

「４２０円です」

「はは……じゃあそれで」

ぶっきらぼうに会計を済ませる相沢に不安になりながらも俺は塩キャラメルラテを作ろうとしたが、相沢は手で「私が作る」と合図し、コーヒーマシーンにカップをセットする。
まだエスプレッソが出ている間にキャラメルシロップが入ったディスペンサーを手に取ると、カップの中にシロップを大量に入れた。

「ちょっと相沢！」

「優衣ちゃん！？」

俺と山本さんが同時に止めたが、相沢は最後まで甘すぎる塩キャラメルラテを作り続けた。

「はい、私の愛情入りですから全部飲んでくださいね」

相沢は怖いくらいの笑顔で塩キャラメルラテのカップを山本さんに渡した。只でさえキャラメルシロップが入った通常のラテは甘いのに、さらに増量されて相当甘くなっているはずだ。

「ぶっ、はははは」

山本さんは笑うと「おっけー、おっけー。優衣ちゃんの愛情入りね」とカップを受け取った。

「優衣ちゃん、今度どっか遊びに行こうよ」

「ありがとうございました」

棒読みで突き放す言葉にも山本さんはイラついた様子はなく、「また誘いに来るから」と笑顔で手を振ると店を出ていった。俺は唖然として動けなかった。

「仲……良いね……」

「は！？　全然！　あんなのそこら辺の男と一緒！」