Sugar&Milk
相沢の言う『そこら辺の男』とは連絡先を聞いてくるような男性のことだろう。女性従業員はたまにお客様から連絡先を聞かれることがある。駅前のコンビニの従業員や、以前には目の前の改札に勤務する駅員にも連絡先を聞かれた先輩もいた。相沢も何度かそういうことを経験している。山本さんも同じだと思っているのだ。
「でもさっきお互い名前で呼んでたし……」
「私の名前教えろってしつこいから仕方なく教えたの。あの人女なら誰でも軽い態度なんだよ」
「女なら誰でも……ね」
山本さんは普段から朱里さんにだってあんな態度で接しているのだろうか。今の相沢ほどではないにしても、同期なのだから相当親しいはず。
「そういえば中山くん、彼女さんとは会ってなくても連絡はした?」
「したよ。アパートに戻ったよって」
「それは昨日連絡してみた?」
「うん。昨日した。それが何?」
突然話題を変えられ、しかも相沢が深刻そうな顔をするからやっぱり朱里さんに何かあったのかと不安になる。
「昨日彼女さんが男の人と居るの見て……」
「え?」
「親しそうだったから気になって……」
「親しそう? それってどんな感じに?」
「お互い笑ってた」
「……それだけ? どこで見たの?」
「改札の前」
朱里さんの会社はこの駅の近くだ。それなら会社の人といても不自然じゃない。
「山本さんじゃないの?」
「私があの人を見間違うはずないよ。彼女さんと同じくらいの年齢の、カッコいい人。カフェにも来たことある」
「あー、分かるかも」
確かもう一人同期の人がいたはず。
「特別親しそうに、気安い感じで……」
「相沢は何が言いたいの?」