Sugar&Milk
さっきからどうしたのだ。普段朱里さんのことなんてあまり聞いてこないのに、今日の相沢は食いついてくる。
「社会人になると色んな人との付き合いがぐっと増えそうじゃん? 彼女さんもそうなのかなって」
「は?」
「中山くんの知らない彼女さんの顔があるかもってこと」
「どういう意味?」
「中山くんも感じたことない? このバイトでもそう。私たち学生とフリーターさんと主婦さんと、同じ場所で働いていてもそれぞれ立場が違うって私思うんだ」
相沢の言いたいことが理解できなくて首を傾げる。
「フリーターの先輩は私たちと6歳しか違わないけど他の仕事もしてる人だから大人に感じる。主婦さんも、私たちと8歳差でもお子さんがいるとすごーく大人に見える。学生と一度卒業して社会人として生活してきた経験がある人とでは考え方が違うって私は思うことがある」
「うん……」
それは分かるような気がして俺は頷いた。
「彼女さんも、バリバリ仕事してお世辞抜きでも綺麗な人だと思うし、私は輝いてるなって思う。そんな人からすると私たちって子供に見えるんだろうなって。彼女さんの周りにいる人はみんな大人の男性だから……」
ぎゅっと胸を掴まれたかのように苦しくなる。
「俺には不釣り合いだって言いたいの?」
「怒らないで……中山くんを傷つけようと思ったわけじゃないの。中山くんが知らないところで彼女さんは男とご飯食べたり、二人で出かけたりっていうのは普通なのかもしれないって話」
息苦しくなる。相沢の言葉が痛いほど響く。
元カノには俺の知らない顔があった。朱里さんもそうなのだろうか。俺といないときの朱里さんは俺には見せない顔を見せる相手がいるかもしれない。その可能性が頭に浮かんで消えてくれない。