Sugar&Milk
手を引かれて靴を脱いで奥に進む。けれどリビングでコートも脱がずに立ったまま朱里さんと向かい合う。
「あの……俺に隠してることありますか?」
「え?」
「朱里さん、昨日の夜何してた?」
「昨日? 昨日は……同期とご飯食べたよ。瑛太くんも会ったことあるよ。山本じゃない、もう一人の。武藤くんっていうんだけど……」
他の男の名前が出ると苦しくて思わず朱里さんを睨むような顔になってしまう。
「ご飯食べただけ?」
「そうだよ」
ますます不安そうな顔になる朱里さんに俺も不安が募る。その顔は俺が怒っているから困っているせいなのか、他の男とご飯に行った後ろめたさからくるものなのか探ってしまう。
「いつもその武藤さんとご飯行くの?」
「武藤くんと行ったのは初めて」
「武藤くんと、ってことは他にご飯に行く人がいるってこと?」
「会社の人とはたまに行くよ。どうしたの? 何かあった?」
「…………」
今夜何度目かの質問にも俺はどう会話を続けようか迷う。
「言ってくれなきゃ瑛太くんが何を知りたいのか分からないよ……」
朱里さんは何かを考えているようで、俺から視線を逸らさない。俺だって朱里さんが何を考えているか分からない。
「じゃあ言いますけど、俺と会ってないときの朱里さんは誰と居ますか?」
「え?」
「いつも男の人と一緒だって聞いたので」
この言葉に朱里さんは目を見開いた。ただ単に驚いたのか、思い当たることがあるのか。それを俺はどう解釈したらいいのだ。
「何それ、誰がそんなこと……」
そう言ってから誰かの顔が浮かんだのか朱里さんは俯く。
「相沢さんがそう言ったの?」