Sugar&Milk
「相手の人に彼女はいるの?」
「武藤くんにはいないと思うけど」
「ほら」
可能性はあるじゃないか。武藤って人が朱里さんに下心がないとは言えないじゃないか。
「瑛太くんはさっきから何に怒ってるの? もしかして私が浮気してると思ってるの?」
「…………」
朱里さんの口から浮気という言葉が出て胸が締め付けられる。こんな気持ちになるのは初めてじゃない。元カノが仲の良かった先輩とキスしているところを見た時と同じだ。
目を合わせられなくて俺の視線は朱里さんの肩のあたりを泳ぐ。
「疑われて悲しいよ……」
朱里さんの声は震えている。俺だってこんなことを言わせたいわけじゃない。
「こんな風に勢いだけで会いに来られても私は困るし、瑛太くんの言動についていけない……なんで浮気を疑われるのかも分からない……」
「朱里さんが大事すぎて正常な判断ができない」
好きな人を独り占めしたい。全部を知りたい。甘えたいし甘えられたい。俺だけを見てほしい。
朱里さんの目から涙がポロポロと零れ落ち、ワンピースにシミを作っていく。泣き顔を見たくなくて足を踏み出し朱里さんを抱きしめた。
「年末一緒に過ごしたからお互いの部屋にそれぞれの服があるし、歯ブラシも置いてあるじゃん?」
「うん……」
「俺の部屋に朱里さんのものがどんどん増えて、ご飯も食べて、なんだか一緒に住んでいるみたいって思ってた」
「うん……私もそう思ってた」
「いっそのこと本当に住んじゃおうかなって」
腕の中の朱里さんが僅かに動く。きっと困らせている。そういうのを望む人じゃないのは分かっている。
「でも俺まだ学生だし、一緒に住んでも朱里さんに経済的に負担かけちゃうし……」
「…………」