Sugar&Milk
「俺ってほんと子供だなって思っちゃって。ちゃんと就職して、早く一人前になって、大人の男になりたいって……。でも朱里さんは俺が追いつきたくても追いつけない大人の男の人と居るんだって思ったら、勝てないなって……」
「そう思った原因は何? 相沢さんは何を言ったの?」
「相沢は関係ない」
「関係あるよ!」
震えながらの大声に朱里さんの顔を覗き込むと、顔を上げた朱里さんと至近距離で目が合う。
「近くにあの子がいて私が気にならないと思った? 私だって疑っちゃうことがあるんだよ!」
「相沢と? そんなわけないじゃん」
「それは私のセリフ! 瑛太くんと相沢さんの関係と、私と同期の関係は一緒なの!」
「何もないって」
「私を疑う癖に自分は何でもないって? 突然身に覚えのないことを言われて責められてるのに、そんなの納得できない!」
今度は俺が言葉を失う。朱里さんの止まらない涙を見て俺も泣きそうになる。
「私と瑛太くんじゃ話が合わないけど、相沢さんなら学校のこととかバイトの話題がたくさんあるじゃん。私はどうしたって瑛太くんの年齢にはなれない。同じ目線で話せない。それが悔しいことだってあるんだよ」
相沢に対してそんな風に思っていたなんて知らなかった。
「言ってくれたらよかったのに……」
「言えないよ……相沢さんのことを意識しちゃうの嫌だったし」
腕の中で朱里さんが小さく笑った。
「あの子に嫉妬するなんて自分がおかしい……」
自虐的に笑うなんてらしくない。感情を爆発させる朱里さんは初めて見る。
「私は自分の生活リズムを崩されたくない」
「え?」
言葉を飲み込む前に朱里さんは俺の肩を押して体を離す。