Sugar&Milk
「瑛太くんといるのは楽しいし癒されてる。でも大事にしてるものが違うと思う。そう気づいた」
涙で潤んだ目でも俺を真っ直ぐ見つめるからますます動揺する。
「朱里さん……待って……言わないで」
言葉の続きを聞きたくなくて首を振っても朱里さんの表情は変わらない。
「私のことに必要以上に干渉されると疲れちゃう」
視界がぼやける。もう少しで俺の目からも涙が落ちてしまいそうだ。
「ごめん……ごめんなさい……」
「年末一緒に生活してみて楽しかったよ。でもそれはお互い休みだったからで、日常が戻ってしまえば私は毎日仕事で瑛太くんは学校がある。どうしてもすれ違う」
「分かってる……」
全部分かっているから、その先を言葉にしないで。
「いきなり家に来ないで連絡して。時間も考えてほしい。人と付き合う上ではそれは大事なことだよ」
涙を堪えるために強く歯を噛みしめる。
「相沢さんの言葉に動揺するくらいなら、私たちの関係ってその程度なのかなって思う」
顎に痛みを感じる。朱里さんも涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
「いやだ……」
また俺は離れられてしまう。身勝手な行動のせいで。
「俺もっと頑張るから……朱里さんを一番に考えて、朱里さんとの将来を考えるから……」
「今夜はもう帰って。終電なくなっちゃうよ」
「でもまだ話が終わってない……」
「今はお互い冷静じゃないよね。少し距離を置いた方がいいと思う」
距離を置くと言われて動揺を隠せない。それはいい結果にならないかもしれないと怖くなる。
朱里さんを抱き締めたくて手を伸ばそうとしたけれど、朱里さんは一歩後ろに距離をとる。それを見て俺の手が震えてしまう。これ以上踏み込むと取り返しがつかなくなりそうで怖い。今は朱里さんを困らせたくない。