Sugar&Milk

あと1時間ほどで家を出てカフェに行く。今夜こそ彼女は会いに来てくれないだろうか。自分からは連絡できないくせに向こうから来てくれないかと願ってしまう。俺への怒りを鎮めてくれないかな、なんて期待して。けれど同時に別れ話をされるんじゃないかって不安も頭の隅に居座っていた。





駅の階段の裏にある事務所に入った。
パソコンや書類が置いてあるデスクにはスタッフへの連絡事項が書かれたノートが置いてある。大体は食材がいつ納品されてくるのか、清掃業者の入る日などが記入されている。新商品の予定とそのレシピを読み終わりページをめくると、コピー紙が貼られている。本社からの連絡事項が店長にメールされてくると、メールを印刷して連絡ノートに貼ることがあった。これが店長が連絡してきた内容だろうか。

件名は『お客様からのご意見』となっていた。俺は件名を読んだだけで憂鬱な気分になる。過去に理不尽なクレームや厳しい意見がきたことはあったが、その度に店舗内で話し合いを重ねて全員で改善してきた。駄目なところを指摘してくれるのはありがたいものだが、やはり気分がいいものではない。
今回はクレームか本当のご意見のどっちなのかと本文に目を通す。来店した女性のお客様が本社のホームページの意見フォームからメールをしてきたようだ。
女性客が夜に来店し店内で食べていたところカウンターにいた店員の声が客席にまで聞こえ、大きい声が煩わしかったのと女性店員の言葉遣いの汚さが不愉快だったというものだ。
これは落ち着いた雰囲気を売りにしているこのカフェにとっては致命的な接客態度だ。
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